昨今、RFP(提案依頼書)を発行してもベンダーから提案を辞退されたという話を多く聞くようになっています。背景には深刻なIT人材不足がありますが、それだけが理由ではありません。かつての「供給>需要」から「供給<需要」へと市場構造が逆転し、ベンダーと発注側の力関係が変わってきました。ベンダーは今、限られたリソースを「成功率の高いプロジェクト」を集中させるため、リスクの高い案件を避けるようになってきています。では、ベンダーはRFPに記述以外に発注側のどこを見て「リスク」を判断しているでしょうか。今回のコラムではその主要なポイントを説明します。

1.発注側のプロジェクト推進体制
第一にチェックされるのは発注側の体制がしっかりしているか、ベンダーに丸投げしようとしていないかです。きちんとした発注者であれば発注側の体制をRFPに明記します。逆にベンダー側の体制に対する要求は出す一方で、自分たちの体制は明確にしない。このような発注者はリスクが高いと判断されます。他にもベンダー選定プロセスの最中に方針が二転三転したり、他部署の介入で方針が変わったりすることはプロジェクト難航のサインとなります。
2.マスタースケジュール
妥当なマスタースケジュールが作成されているかも判断のポイントになります。マイルストーンが不明確だったり、カットオーバーありきで各タスクが論理的な先行後続関係になっておらず、無理に詰め込んだスケジュールになったりしていないかです。特に、RFP発行後にマスタースケジュールが修正される場合、計画そのものが脆弱であると判断されます。
3.コミュニケーション
システム導入においては、発注側とベンダー側の円滑なコミュニケーションがプロジェクト成功の鍵となります。選定フェーズで発注側のコミュニケーションレベルが低いことが露呈するとベンダーはリスクの高い顧客と判断します。具体的には「メールが長い割に何を言いたいのかわからない」「コミュニケーション窓口が一本化されておらず、複数名から矛盾した依頼がくる」「就業時間外のメールや電話連絡」などが挙げられます。
ベンダーが案件を選別する市場環境で、発注側としてはベンダーを評価するだけではなく、ベンダーから評価されていることを忘れず、信頼できるパートナーであることを示す必要があります。提案辞退というリスクを避けるためにも、RFP発行前に今一度発注側のプロジェクト推進体制、マスタースケジュール、コミュニケーションを見直してみましょう。
2026年3月