COLUMN

2024.12.23

当たり前を考える

「事前準備の必要性」と「伝わっていないことを織り込ませる」について

written by 藤波 健人

最近参画しているプロジェクトの会議体で「認識の齟齬があり、確認したいんですけど…」というような場面を目にするようになった。類似した発言としては、

「私はこういうつもりで言ったのにな・・・」
「これは初耳でして…」
「何か言いたいのかよくわからない・・・」 など

別の誰かが「補足をしますと・・・」という努力も虚しく議論が空中分解し、会議の仕切り直しや1つの議題に対する時間が延びていく。その姿を見つつ、明日は我が身と思いながら会議でファシリテーションを行う日々を過ごしているので、自分の戒めとともに考えを述べたい。

まずはChatGPTに上記のような状況を記載し、原因を10個挙げてもらった。
回答は以下である。

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以下のような原因が考えられます。

1. 目的やゴールの共有不足
2. 前提条件の不一致
3. コミュニケーション不足
4. 議事進行のスキル不足
5. 専門用語や言葉の定義の違い
6. 役割分担の曖昧さ
7. 事前資料や情報の未確認
8. 聞き手の理解不足
9. 議論の進行スピードが速すぎる
10.心理的安全性の欠如

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もちろん、参画するメンバに合わせた対応や空気の醸成は必要ではあると思うが、それ以上に、簡潔に言うならば、「事前準備が大事であること」「伝わっていないことを織り込ませること」が肝心なのではというのが私の意見である。

「事前準備」
=十分な情報・定義の事前展開を行うこと

「伝わっていないことを織り込ませる」
=1歩手前の情報を伝える
=伝わっていないことを前提に前の文脈を簡潔に伝えて本題を展開すること

とここでは定義しているので、これを踏まえて記載していく。
「事前準備」が不足している場合、不幸な結果に近づくのは容易に考えられる。例えば、「情報を持った者が持たない者に比べ立場が優越してしまう」という点を取り上げたい。

「会議で専門的な視点や情報・知見を基に意見を発すること」と「事前に共有されるべき情報を展開しておらずその情報を基に意見を発すること」は当然別個のことである。事前共有がされず情報格差が広がると、会議の場ではなく情報の多い者が少ない者の評価や否定をし始める場となってしまうおそれがある。そのような場の原因はもはや聞き手の理解不足という問題ではないし、心理的安全性を担保した会議とは言えない。故に、会議開始前に情報は各参加者との間で平準化されているのが望ましい。情報を持つ者はこれを肝に銘じなければならない。

だが、「事前準備」は様々な制約がある。相手も自分もそれぞれの仕事の合間を縫って準備をして会議に参加する。伝える側の準備が不十分なこともあるだろうが、いくら十全に情報を展開しても、受け取り側が十分に理解できなければ「事前準備」できたとは言えない。例えば、出席者が他のタスクに追われて資料を確認する時間が取れない場合や、その情報に関連する基礎知識が不足している場合、準備の効果は限定的になる。また、各人が会議をどれだけ優先事項として扱うかも影響する。ではそのような場合はどうのようにすればよいか。

そこで「伝わっていないことを織り込ませる」=「1歩手前の情報を伝える」ことの登場である。意見を発する者やファシリテーターはこれを意識して発言することが対策となると考えている。具体的には情報の格差を埋めるために

「前回は〇〇について話ました」
「△△である〇〇についてですが・・・」(△△≒〇〇)

と情報を会議内でダブらせたりして余計に伝えることだ。実施される会議にて、特に「△△である〇〇についてですが・・・」を意識した上で、発言者は情報を把握できていない人や理解が追いついていない人に対し、潜在的なインプットを行うことが望ましい。そのインプットをすることで会議参加者にその用語や定義が刷り込まれる。参加者の何人かにとっては新しい用語や定義だったとしても、その言葉の背景や簡単な説明を一言添えるだけで簡易的な理解を基に意見を発することができる。そのような試みを踏まえて、もし参加者側から「用語や定義の認識がずれている」という指摘があれば、それは優先的に確認すべき事項であると言える。そのためには発言者自身が一言で情報を伝えることが必要で、それも含めて「事前準備」は当人の理解を深めるためにも必要な作業である。

このようにして、会議における「事前準備」と「伝わっていないことを織り込ませる」ことは、単なる会議実施・参加のスキルを超えて、参加者全員が建設的な議論に貢献できる環境を作る鍵となる。これらを実践することで、情報格差を最小限に抑え、心理的安全を担保した会議に近づくことができるだろう。当たり前の重要性を改めて見直し、日々活かしていきたいものだ。

2024年12月


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