COLUMN

2026.10.26

ITコンサルタントの日常

「知識は意図的に使わなければ」と実感

written by 小早川 豊

使ってこその知識とよく言われるが、その通りと思いつつも、いざ使おうとしても何をしたらいいか思いつかないことが多い。しかしながら、最近小さいながらも「使えた」感覚があった。それはファイルサーバーの可用性を打合せしていた時であった。こういった時、議論が空中戦となり、過剰な要件となってしまうことが多い。例えば、業務継続を考えたとき、サーバーを冗長構成にするまではいいが、どこまで冗長にするのか、サーバー本体か、ストレージか、ストレージのHDDかと、恐れるあまり対象を過剰にしてしまう場合もある。はたまた、サーバーをシームレスに切り替えるのか、と方法についても過剰にしてしまう傾向にある。

そこで、こうった検討をする場合、筆者は目標を先に検討するようにしている。至極当たり前のことで、故障時の復旧目標は何時間でどのくらいのレベルまで復旧するか、等を先に検討するようにしている。
※もちろん目的は見据えたうえで
しかし、この目標についても議論が長引く。「大体1日ぐらいじゃないか」「いやいやユーザー的には2時間くらいじゃないか」と目標設定に時間がかかる。また、その目標もファイルサーバーレベルだと根拠がない。コンシューマー向けサイトであれば、利益や顧客満足度に直結するが、社内のファイルサーバーはそこまでではない。作業的には一日使えなくても、致命的な支障はないはずだが、障害による評価を恐れるがあまり、根拠なく厳しくなりがちである。

そして、根拠がないのでこちらも議論が空中戦となってしまう。上記のとおり、目標について誰しも確信をもっているわけではない。この時間でいいのか、このレベルでいいのか、有事に際責任が取れるのか、と不明瞭・不安定な状態で議論をしているからだ。この状態について、解決策がないかと考えていた。何か根拠めいたものがないかと模索していた。

その時、ひらめきがあった。とても小さなひらめきである。
それは、昔勉強したシステムの稼働率計算を使えば説得力がでるのでは、と。
システム稼働率は以下で表せる。

稼働率=MTBF(MTBF/(MTBF+MTTR))
※MTBF=平均故障間隔、一つの故障から、次の故障までの平均時間
※MTTR=平均復旧時間、故障してから復旧するまでの平均時間

議論での使い方を例示してみよう。
まず、サーバーの年間利用予定時間を決める。平日に8時間(年2160時間)としよう。次に、平均復旧時間(この場合は停止を許容できる時間)を設定したくなるところであるが、この場合先に稼働率を仮決めする。仮に99.9%としよう。社内のサーバーであれば十分すぎるはずだ。
これを年間の許容停止時間に換算すると以下となる。

年間許容停止時間=2160x(1-99.9%)
年間許容停止時間=2.16時間

つまり一年間の停止時間を合計で約2時間以内にする、という目標になる。この計算により目標に説得力が生まれる。「大体2時間」と「稼働率99.9%だから2時間」とでは、議論の進みに差が出る。また、根拠があるため「年間2時間は少ないな、もう少し稼働率を落とそうか」と別の意見も出しやすい。

この稼働率計算について、大昔に勉強し、そのころは「何に使うのだろう」と思っていた。そして恥ずかしながら、用語(稼働率など)は使っていても、真の意味で使うことはなかった。稼働率計算も先人たちのナレッジである。先人たりが考え抜いて編み出したものだ。そのナレッジを「漫然と知る」だけでなく、「表面だけ使うのではなく」、「意図的に使おう」としなれば活用できないものだと実感した瞬間であった。

2026年10月


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