COLUMN

2025.04.07

ITの引っ越し~持っていけば動くわけではありません~

インターネット回線の高速化

written by 古川 恒郎

筆者は築50年を超えたマンションの一室で暮らしていますが、こういった古い建物でのインターネット接続回線について調べていて、NTT東日本とauの対応方法が対照的に思えたので、同じ古い建物でインターネット回線を利用する場合の参考になればと今回まとめてみます。

以前住んでいたところではフレッツISDNやケーブルテレビ、フレッツ光の宅内引き込みなどで当時のプライベート利用としてはそこそこ高速なサービスを利用できていました。ところが、現在の環境では回線契約自体はフレッツ光ネクストで帯域は最大1Gbsと謳われているものの、光ファイバーは建物内に設置した最終端末まで。そこから各居室にはメタルの電話線を使ったVDSLで引き込んでいるため、速くても下りで50~60Mbps程度でしか利用できていません。

最近の建物であれば建物まで引き込まれた回線を光ファイバーやLANケーブルなどに分岐して各居室まで引き込んで共有するか、場合によっては分岐なしで居室まで直接ファイバーを引き込んで数百Mbpsの通信速度を期待できることが当たり前になっています。しかし、現在のマンションとそのひとつ前に住んでいた集合住宅は1972年と1974年にできた築50年超えの、光ファイバーどころかISDNを使った64kbpsですら夢の高速通信といった時代の建物のため、内部の配管は電力線と電話線を収めることしか想定していない狭いもので、光ファイバーやLANケーブルなどを後から追加して通すことができない構造になっています。そのため、建物の構造に手を加えずに居室内への引き込みには電話線にVDSLの信号を追加で載せるしかない構造になっていて、光ファイバーでの接続を使った高速通信は期待できない状態でした。

ところが、au(KDDI)がVDSLの後続規格であるG.Fastを採用し、居室内への分岐にVDSLを使用している集合住宅などに対してこの規格への移行を数年前から始めました。G.Fastに移行すると既設のメタル線など建物側の設備には手を加えずに光ファイバーの終端装置からメタル線への分岐装置と居室内に設置するゲイトウェイ装置の交換だけで数百Mbpsの帯域にリプレースが可能で、筆者の住んでいるマンションでも設備のリプレースが昨年行われたため、フレッツ光からauひかりに足回りを変更すれば現在よりも高速なサービス利用が期待できるようになりました。

これに対してNTT東日本は居室内への引き込みが光ファイバーかメタル線で差をつけていた料金を高額な光ファイバー側に統一し、引き換えとして現在のVDSLを採用している建物に対して、居室内引き込みのメタル線を光ファイバーやLANケーブルに変更するための工事費を無償化するサービスを始め、やはり数百Mbpsの帯域への移行を行おうとしています。auが利用者側の環境に極力手を付けずに自前の設備を交換することで高速化を図っているのとは対照的にNTT東日本では利用者側の設備に手を加えてもらうことを前提に高速化を進めようという対照的な構図です。

この件についてのNTT東日本の案内を見たとき、この方法なら自宅の環境も高速化できると一瞬期待したのですが、ちょっと考えただけでも
〇 現在の配管では光ファイバーを通すことが構造的にできないため、マンション全体の配管工事を行う
〇 すべてのメタル線を光ファイバーに交換すれば従来のアナログ固定電話を使っている居室もひかり電話にリプレースを行う
といった条件のクリアが必要で、特定のオーナーが所有している賃貸住宅であればともかく、居室ごとにオーナーが異なる区分所有の物件では管理組合に提案して総会での合意議決なしには進めることができないですし、固定電話しか使っていない人に全棟工事までして移行する価値があると理解を得られるか不明で、現実的なプランには思えませんでした。

こうなると移行先の候補はauのG.Fastなので、こちらの回線契約で現在利用しているプロバイダーのサービスが利用可能か、5Gルーター込みのモバイルサービスも始めていて自宅も5Gのサービスエリアに入ったので、ひかり電話に載せているフレッツ光からこちらに乗り換えるのが現実的なのかもしれないと考えているところです。

2025年4月

一覧へ戻る →

ITシステムの導入や運用に関する
お困りごとがありましたら、
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ

お問い合わせ
採用情報