相変わらずノートPCやスマートフォン・タブレット、Bluetooth接続の周辺機器等PC関連に限らず、リチウムイオンバッテリーや内蔵されたさまざまな機器を当たり前のように見かけます。3年ほど前のコラム「内蔵バッテリーは手軽に交換したい(2021年6月21日)」の頃と状況は変わらず、ユーザーが自分で簡単に交換できるような製品に出会うことはほぼありません。
ちょうど1年前、Dynabookでユーザーが簡単にバッテリーを交換できる製品が発表された際に、IT系のニュースメディアで一種珍しいニュースとして取り上げられたましたが、一般的にはバッテリーの交換が必要な場合は、修理対応としてメーカー側に送付して有償で交換することになります。Dynabookでそういったモデルが発売されたとはいえ、その後に続く製品がDynabookに限らず出てきたという話は聞かず、趨勢は変わっていないようで、スマートフォン・タブレットや各種小型のバッテリー内蔵機器についても言わずもがなです。
携帯性が重視される製品については、狭い空間の中に各種パーツをギチギチに詰め込むようになっているため、完成品をユーザーが分解することは想定外で、内部のCPUやストレージ、メモリなど以前はユーザーが自分で交換可能だったパーツも内蔵バッテリーと同様に考慮された構造にはなっていません。こういった構造になる理由自体は理解できますが、自分と同様に「なんだかなぁ…」と考える人がいるようで、Webサイト上で検索すると様々な機器の分解修理の体験記事が見つかります。
その最たるもので各種機器についての分解の難易度や手順に加え、便利なツールの販売もはじめてビジネスにしてしまった「iFixiT」というWebサイトもあります。iFixiTは2003年にスタートした企業ですが、IT業界の中で注目を集めるようになったのは2007年に初代iPhoneが発売され、それまで自分で交換のできた携帯電話のバッテリーが内蔵埋め込みで自分では交換できない構造となり、分解手順を公開した頃だったように記憶しています。その後iPhoneの後継機種やiPadの新型が発表されるたびに分解手順を公開し、他社が発表するユーザー修理を想定していない各種機器についても情報を公開し、現在ではiFixiTが示す分解難易度の指標があちらこちらで参照されるようになっています。
現在手元でサブとして使っている発売から4年経ったiPhone SE2のバッテリーの寿命が近かくなったのでこのサイトで手順を確認してみると、気軽に分解して装着しているパーツを抜き差しするレベルではなく、そこそこ手間のかかるもののできない作業ではないなと少し心が動きました。とはいえ、これのために必要な道具を揃えるコストやパーツ入手の手間を考えると1回限りの作業だと割に合わないと感じました。加えて、日本国内ではiPhoneに限らず、携帯電話や無線LANなど通信機器を持った機器は技適の縛りがあるため、利用者が勝手に本体ケースを明けて修理を行うことは通信機能に直接関係がないように思える場合でも電波法違反の機器になってしまうことを思い出しました。少なくとも事業者登録をして看板を出す必要があるので、一度限りのバッテリー交換では高いハードルです。
Appleのサポートサイトで確認してみると、1台当たりの交換費用の見積もりは11,200円ですので、この金額であればAppleストアの持ち込み修理が手っ取り早く、技適に話を抜きにしても自前で作業に必要な道具や交換バッテリーを調達する手間と費用を考えれば割が合わない可能性が高そうです。
2024年11月