システム導入プロジェクトではベンダー選定、要件定義、進捗会議、稼働判定会議など、数多くの重要な会議が行われます。会議のファシリテーターは情報システム部門が務めることもあれば、ベンダーが務めることもあります。この会議の仕切り方ひとつでプロジェクトの成否は大きく左右されます。今回のコラムでは、これまで多くのプロジェクトを支援する中で見えてきた、手戻りが少なく、推進力のある優秀なファシリテーターに共通する3つの特徴をまとめます。

①無言の人からも意見を引き出す
会議中、表情が曇っている人や、何か言いたげなのに発言しない人を見逃しません。「何か意見はありませんか?」と漠然と聞くのではなく、「現場を一番知っている〇〇さんから見て、運用面で問題がありそうな部分はありますか?」などと、具体的な視点を出して発言のハードルを下げます。これは、会議後に「実はこんな問題がありそうなんだけど…」とちゃぶ台返しが起き、再検討が発生するのを防ぐためです。懸念点は必ず会議の場で全て吐き出してもらいます。
②その場で可視化し、前提を揃える
議論の中で、参加者間の認識がずれていそうだと感じたら、即座に画面共有やホワイトボードを活用します。ポンチ絵や表をその場で書き出し、「いま私達が話しているのはこの部分ですよね?」と可視化して認識をすり合わせます。「認識があっていますか?」と口頭で確認するだけでは不十分です。各自が違う絵を思い浮かべたまま「はい」と答えてしまう危険性があるからです。これを怠ると、次回の会議や成果物レビューの段階で「そういう前提だとは思っていなかった」という致命的な手戻りが発生します。
③明確な「YES」をもらう
「これでよろしいでしょうか?」「はい…」といった語尾を濁した曖昧な返事を聞き逃しません。「何か気になる点はありますか?」と引っかかっている理由を丁寧に掘り下げます。また、問いかけに対して誰からも返事がない時、「特に異論は無いようですので進めます」と結論付けることは絶対にしません。必ずキーパーソン(意思決定者)に対して「〇〇さん、この方針でよろしいでしょうか?」と名指しで明確な「YES」をもらいます。
優秀なファシリテーターに共通するのは、常に感度の高いアンテナを張り、少しでも違和感があれば曖昧にせずにその場で明確にする姿勢です。決して相手を問い詰めるのではなく、適切な問いかけによって合意へと導いていきます。こうしたファシリテーションができる人材がいるプロジェクトは、無駄な手戻りがなく、確実に前に進んでいくのです。
2026年11月