新型コロナ流行の頃には感染抑制に効果が期待できる体感温度を上げる効果があると認知度が高まったためか、電気店やホームセンターの店頭で加湿器を目にする機会が増えました。これもコロナ流行をきっかけですが、リモートワークも浸透して日中に自宅でいることも増えて、この面でも加湿器のニーズが高まったようです。季節商品のためメーカーでは既に今期の生産と出荷を終えて店頭と流通在庫のみとなっているので少し時期遅れとなりますが、IT機器の運用面から製品選択について考えてみます。
加湿器の加湿方式には以下の4タイプがあります。
・ 超音波の振動で水からミスト(霧)を発生させる超音波式
・ 水をヒーターで加熱して水蒸気を発生させる加熱式
・ 水に浸したフィルターに温風をあてて水分を気化させるハイブリッド式
・ 水に浸したフィルターに常温の風をあてて水分を気化させる気化式
これらのうち超音波式と加熱式が店頭での露出や価格面でよく見かけるように思います。
加熱式の場合はヒーターで加熱するため、個人の机上に置くようなUSBタイプのACアダプタを電源に使うボトルタイプは別にして、小型のものでも消費電力は250W前後以上ですが、超音波式の場合は50W前後で収まり、電気料金面ではこちらが圧倒的に有利です。本体の価格面ではヒーターを必要としない分、同じ広さを対象にした製品であれば超音波式の方が価格を抑えることが可能です。デザイン面でもがっしりとした武骨な印象のものは多い加熱式に対して気化式の製品には柔らかい印象の製品が多く、店頭で見かける品数では超音波式の方が優勢のように見えます。
このように一般論としては超音波式の方が優れているという結論になりそうですが、ITやAV関連などを運用する立場で見ると超音波式は放出するミストの成分が水道水そのままという点で水蒸気だけを放出する加熱式の方がお勧めという結論となります。
水道水にはカルキ(消毒用の塩素)やカルシウムその他ミネラルが含まれているため、超音波式で生成されたミストの中にはこれらの成分もそのまま水と一緒に放出されます。加熱式の場合は放出されるのは加熱で生成されるミネラルを含まない水蒸気です。どちらも室内に設置したパソコンやAV機器の内部にも入り込むので過度に高い湿度になってから急激な室温低下が発生すると結露のリスクがあります。
ミストの場合は含まれるミネラル分が機器内の基盤などに固化してそのまま残ってしまい、機器の誤作動を引き起こすリスクも加わります。加熱式の場合、蒸気にはミネラル分が含まれないものの残っている加湿器内部の掃除を怠ると、残ったミネラルが鍾乳石のような塊になってしまうという欠点もありますが、気が付かないうちに見えないところでパソコンやAV機器の故障に見舞われて慌てるよりはよいでしょう。
2025年1月